「損益計算書は見やすいのですが、利益がたくさん載っています。どれを見ればいいのでしょうか?」
当協会で勉強会などを行うとこのような質問をいただくことがあります。損益計算書は貸借対照表に比べてみやすいので質問自体が少ないのですが、いただくとしたら5つの利益関連が多いと思います。
今回は、5つの利益の違いについてです。
■損益計算書の5つの利益
損益計算書にては、売上からスタートして順番に売上総利益・営業利益・経常利益・税引前当期純利益・当期純利益と5つの利益が書かれています。
最終的に黒字かどうかは当期純利益で判断をするため、「売上−経費=当期純利益」という見方をしている方が多いようです。
当期純利益は最終的な利益なので重要ですが、その間の他の利益の状況を見ないと会社の問題点や改善点を把握することができません。
それぞれの特徴を押さえておきましょう。
■それぞれの利益の特徴
それぞれの利益の特徴を押さえておきましょう。
【売上総利益】
粗利益と呼ばれる利益で、売上から商品の仕入れ代や原材料を差し引いて求めます。売上総利益は、「商品やサービス自体の強さ」を表しています。この売上総利益が他社と比較して高い会社は商品やサービスに独自性があり、逆に低いと独自性がなく価格競争に巻き込まれているなどの可能性があります。中小企業は、大企業のように価格勝負は難しいので非常に重要な利益になります。
【営業利益】
営業利益は、売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引きして求めます。販売費及び一般管理費とは、簡単にいうと「売るために必要な費用」です。営業利益は、その会社の「本業の強さ」を表しています。仮に売上総利益が高くても(商品やサービスが魅力的でも)、売り方に問題があると営業利益率は小さくなります。逆に売り方がうまいために商品の力が弱くても営業利益率が良い会社もあります。
【経常利益】
経常利益は、営業利益に営業外収益・営業外費用を反映させた利益のことを言います。営業外収益・営業外費用とはその名称の通り「本業に関係がない収益・費用」のことを言い、ここから経常利益は「会社自体の強さ」「経営のうまさ」などを表すと言われています。日本では、この経常利益を大切な指標とすることが多く、会社の収益性を図る上で重要な指標です。
【税引前当期純利益】
税引前当期純利益は、経常利益に特別利益・特別損失を反映させた利益のことを言います。特別利益・特別損失は、一過性の利益や損失のことを言います。特別利益で大きく利益を上げても「今期だけの利益」と判断がされ、また逆に特別損失で大きな赤字を出しても同じように「一過性の損失」として判断をされることもあります。
【当期純利益】
当期純利益は、法人税等の税金を差し引きした最終的な会社の利益を表しています。この利益が貸借対照表の純資産に積み上げれていくため重要な利益と言えます。
■赤字の前をチェック
前述の内容からそれぞれの利益にはそれぞれ異なる特徴があるということをご確認いただきました。どの利益が一番大事かというのはその目的によって変わります。会社の本業がどうかを判断するのであれば営業利益だし、商品の値付けなどを確認するのであれば売上総利益になるなど使い分ける必要性があります。
損益計算書の味方のポイントとしては、赤字や大きく減少している利益の前を見るということです。
営業利益が大きく減っているのであれば、コストがかかり過ぎているとか値付けがおかしい、割引をし過ぎているなどの営業利益の前に問題がある可能性があります。
赤字の前をチェックすることを意識して見るようにしましょう。
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